東京農業から新しい食育を


食育の教材として畑の日常を発信しています、ぜひ使ってください!

ブログ&食育記事


 

<都内学校給食での地産地消の取組>

 当園では代表近藤剛の就農以来15年、長きにわたって地域の給食用に野菜の生産・出荷を続けてまいりました。

 

 2022年現在では、多摩地域のみならず東京23区、合計150校以上、毎週数万人の子供たちに地元・東京産の野菜をお届けしています。

 

 

 

<東京農業の担い手としてこれまでの活動経緯>

  • 高品質野菜生産への努力
  • 地域人材採用
  • 社内外を問わない地域への技術の承継
  • 近隣農家と協力した都内給食、都内小売店地場産コーナーの店頭づくりと出荷
  • 都内全域からの見学、体験、インターンの受け入れ

 

  生産の質を高める目的から町や都の生産物への認定・認証制度や、JGAP認証の取得など、生産物の安全性を高める活動への継続的な取り組みを行ってきました。

 

 また、都立瑞穂農芸高校からのインターンの受入や採用活動等を通して、技術を地元出身の次世代に継承しながら、質の高い生産物を地元の人材と共に生産する仕組み作りに挑戦し続けています。

 

 近年では地域農家とチームを組み、東京都内スーパー(多店舗)での地場産コーナー作りに挑戦していることなど、東京都内有数の規模である農家、担い手としてこれらの取組を継続する中で、私たちは今大きな課題に直面しています。


<課題1.東京農業の一般的な認知度の低さ>

▶東京に本気で農業に取り組んでいる農家がいることをご存じですか?

 

 2022年現在、東京では約1400万人(日本の人口の1割以上)が生活しております。

 東京は日本で一番農地面積が少なく、特に23区山手線内側では販売農家がほとんど存在していません。道を歩いていて畑があることが稀な東京は、日本でも特有の農業に触れあい難い環境と言えます。そのため、「農業をしていること」が珍しいと捉えられ、都内の農業系学校でさえ都内農家について把握していないことが多くあります。

 

 このような状況のため

・東京都内小中学校の農業体験等も埼玉県や神奈川県などの都外で実施されていることが多い

・農業界へ就職希望の優秀な学生が希望をあきらめたり都外に流出している

という現状があります。

 

 しかしながら、食育推進法では地産地消が推進されており、学校給食での地元産野菜の使用率向上が目標とされており、多摩地域や一部の区では都内給食や都内小売店の地場産コーナーを私たち東京農家が支えています。

 

 私たちは長年にわたり東京都・瑞穂町を拠点に生産量を増加し技術を継承し続け、学校給食への出荷や、東京都内スーパー、百貨店などの地元産コーナーへの出荷を行ってきました。地元・瑞穂農芸高校からのインターン、採用実績を通して、都内にも農業界に熱意を持つ若者が沢山いることも感じています。

 

 以上のことから、私たちは食育という切り口から、東京農業の認知度を高め、都民の皆様と共に東京の食文化の向上、東京農業の発展に寄与していきたいと考えています。

地元である羽村瑞穂給食センター

瑞穂農芸高校インターン生、卒業生・当園社員と共に(2019年)


<課題2.業者間コミュニケーションの不足>

 

 私たちは野菜の生産を行い消費者に届けるために、多くの業者様とお取引させていただいています。

 具体的には、

 ①種苗会社から種や苗を購入し

 ②生産者である当園で野菜に育てます。当園は出来上がった野菜を

 ③物流業者様にお渡しし、物流会社様が

 ④卸売業者様へ、卸売業者様が

 ⑤小売店や給食業者様に野菜を届けてくださいます。小売店で

 ⑥消費者の皆様に購入いただいたり、学校で子供たちが給食を食べる

 この流れでも、6人の登場人物がいます。

 この他、加工業者様や、商品開発・新種開発等の研究者の方、メディアの皆様や、外食・中食(弁当・惣菜など)業者様も含めると、普段生活者として私たちが食べ物を口にするまでには沢山の方々が関わっていることがわかります。

 

 しかし、例えば

・種苗会社と小売業者の接点がないことから、小売業者がネギの品種の違いによる季節ごとの出来栄え等を知ることは難しいです。

・生産者と加工業者の間に仲卸業者などが入ることから、時期ごとの野菜の品質についての細やかな説明がしづらく、病気や腐りと、野菜ごとの単なる個性との見分けがつきづらい現状があります。

 

 専門家である各業者でさえこの状況なのですから、消費者の皆様が1つ1つの野菜についてわからないことが多いのは仕方のないこととも言え、

 

<課題3.消費者から生産工程・流通工程が見えない>

という問題にもつながります。

 

 しかし、生産者の立場からは全ての流通過程の登場人物と直接コミュニケーションをとることができるため、各工程での困りごとや課題を聞き解決に結びつけることが可能です。

 

 以上のことから、私たちは各流通過程の野菜の「使用者・業者」間とコミュニケーションをとり一気通貫した情報の流通を可能にすること、そして消費者の皆様に農産物・生産物の通り道をわかりやすくお伝えすることにより、食育を通して農業への理解、正しい認識を広めていきたいと考えています。 

 


<取組:オンライン×オフライン~新しい食育体験~>

 私たちは東京都の給食・食卓を支える野菜生産者(担い手)として「食育」によって、上記1~3の課題に向き合います。

 

 私たちが今後取り組む食育は、これまでの東京や日本各地で行われていた「農業体験」と、2020年以降新型コロナウイルスの出現によって民間に根付いた「オンライン」という選択肢を組み合わせたハイブリッド型の新しい食育体験となります。人間の歴史の中でも最古の仕事であり、かつては日本人にとって身近な存在であった農業を、最新技術と掛け合わせた新しい方法で、東京都内の皆様にお届けしてまいります。

 

小~中学生向け食育体験

例:サツマイモ

定植体験(5月)⇒経過観察(7月)⇒収穫体験(9月~)

 

 これまで学校給食への出荷を通して触れ合ってきた東京都内の小中学生への食育(農業体験)として、学校ごとに畑に招待し農業体験の受入を実施します。

 

 「秋のサツマイモの収穫体験」を実施するためには春に苗を植えることが必要です。春に植えた苗は季節に応じて成長し、夏には畑いっぱいが緑に覆われます。畑いっぱいに広がった緑(葉)が光合成をすることで地中の実(サツマイモ)が成長し、秋に収穫できるようになる。

 

 普段自分たちが食べている野菜が、この時間の流れと自然の仕組みによって出来上がっていることを、定植体験(オフライン)、経過観察(オンライン)、収穫体験(オフライン)、給食や店頭で買い自宅で実食(オフライン)することによって食育を実現します。

青年期&ご家族向け食育ツアー@瑞穂町

例:サツマイモ×牧場体験×お茶・いちご狩り×花×旅行

 

 私たちが農業を行っている瑞穂町は、人口に対する農地面積が都内で一番広い地域です。瑞穂町には野菜農家だけでなく、

・ジェラートが美味しい牧場

・日本の三銘茶である狭山茶の生産農家

・いちご狩り体験ができる農場

・シクラメンの生産者

・数少ない農業高校の一つである都立瑞穂農芸高校

など、農業資源が大変豊富です。

 

 そんな地域の魅力・観光資源を活かし、普段都会で生活していると味わうことが出来ない農業の空気を、都心から車で1時間程度で味わいことが出来るマイクロツーリズムを企画しています。

 

 食育は子供だけに関わるものではありません。全世帯の6割以上が1~2人世帯である昨今、高校生以上の生産年齢での食事意識の向上が必要であると言われています。


<瑞穂町で食育に取り組むことの意義>

 当園が所在する瑞穂町は、東京の西多摩地域、埼玉県との県境に位置します。新宿からは約50キロ、車でも電車でも1時間30分前後です。町内にはアメリカ軍横田基地があり、見学に訪れた方も多いことと思います。

 

 上述の通り瑞穂町は人口に対する農地面積が都内で一番広く、野菜の生産だけでなくお茶や果物、酪農、花卉農家(花)も在る等、東京都内に有数の農業生産地です。特に当園も農場を持つ岩蔵街道付近には上記の酪農、お茶・果物、花農家が集中しており、瑞穂町に来ることでそれらの生産地を見ることができます。そして、都立農芸高校には都内各所から農業に関心を持つ学生たちが通学しており、秋のインターンでは毎年多くの学生が瑞穂町内の農家で農業・職場体験を行っています。幅広い農業の中でもこれらの生産者が集中して集まっている地域は珍しく、青梅や奥多摩等が近いことから農業体験を組み合わせたマイクロツーリズムという観点からも注目度が高まってきています。

 

 このような土地柄からか、近年は瑞穂町をあげて新規就農者(農家出身者ではなく、自身農地を借り生産を行い農家になる人)の受入を数多く行ってまいりました。当園が協力体制を築いている新規就農者だけでも6~8軒あり、新しく農業をしたい、農業に意気込みがある人材を受け入れることの盛んな地域であると言えます。

 

 瑞穂町の野菜生産者は、これまで長らく地域圏内の小売店や直売所に主に販売していました。地場産コーナーの人気は高く、近隣のジョイフル本田瑞穂店やベイシア青梅インター店などは週末になると駐車場が終日満車状態になるほど賑わい、地場産コーナーも夕方には売り切れてしまうほどで、消費者と近い距離で生産を行ってきました。近年では農業体験の受入れや東京都内給食への出荷も盛んになり、当園が中心となって進めているチーム生産では、生産者の技術の向上に合わせて近隣の小売店だけでなく都内全域への出荷の拡大を進めています。

 

 近年の取組だけでなく瑞穂町の歴史からも、長らく農業に注力してきたことが分かっており、なかでもサツマイモについては江戸時代から生産されていたようです。今後当園では長期計画としてサツマイモの生産量の増加に取り組む予定であり、5年後には現在の15倍、100トン以上のサツマイモを自社生産し、地域農家と協力し200トン以上を瑞穂町内で生産していきたいと考えています。

 

 また、東京都には農地転用(宅地などに変えること)できる土地が多いですが、瑞穂町には農地転用が出来ない土地が多く、今後都内他地域と比較し相対的に農地割合が多くなっていくことが予想されます。

 

 以上から、

・現在野菜、果物、お茶、酪農等幅広い農業がおこなわれていること

・都立農芸高校があり、新規就農者の受け入れを数多く行っていることなど農業への関心に対して受け入れる土壌があること

・都内でも有数の農地面積を誇ること。若い生産者が多く、東京農業を発展させる意気込みを持っていること

瑞穂町はこれらの特徴を持っており、農業資源(農地、生産物、人材等)が豊富であることから今後瑞穂町は東京都内有数の食育に適した地域になっていくと言えます。

 


○農業の現状と食育を通して当園が実現したい未来○

<目標:都市近郊農業・東京農業の活性化>

~これからの日本農業~

  現在日本では人口の減少が進み、勿論全国的に農家、農業従事者の数も減っています。しかしながら、世界的には人口が増加しているため、国の方針としては農産物の輸出量増加を目指しています。

 

 また、食育基本法、食料・農業・農村基本法によると、「輸入を減らし国産国消、地産地消を増加させること」や「農地の担い手(大規模農園等)への集積」を方針としており、担い手がそれぞれの地域、日本の農業を支えることを目標としています。これはつまり、各地域ごとにその地域の大きな生産者が地元の生産物需要に応えるべく生産量を拡大し地元での消費量を増やし、現在大産地として日本全体を支えているような地域の農産物は輸出品として世界の食を支えられるような状況に向かっていると言えます。

~これからの東京農業~

 

 当園が生産している東京都でも、もちろん上記の食育基本法、食料・農業・農村基本法に準じて生産を行っています。そんな中で、大産地ではない東京農家には東京農家故の課題が存在しています。

 これらの課題に対し、当園では

1.当園が位置する瑞穂町近隣の生産者の生産力を拡大し高品質の野菜を沢山作れる状況をつくること

2.都内学校の受入等を実施し、大型の食育体験を通して瑞穂町に「農業が盛んな生産地」のイメージを作ること

3.瑞穂町を中心とした近隣農家の出荷先を都内全域に確保すること

以上の実現に向け注力していこうと考えています。

 

 日本の1割以上の人口が集中する東京にて食育に取り組むことによって多くの方に農業や食への認識と理解を広め、地産地消を促進することで東京農業の生産力を高めつつ現在の大型生産地が国産野菜を輸出できる状況に寄与し、安全で安心な生産が可能な日本の農業が世界の食糧需要を満たしていくことに貢献していきたいと考えています。